2023-05-31 投稿

金利、景気、金融政策、為替についての基礎知識のまとめ

ニュースでよく聞くけれど、意味がよくわからない金融と経済について、理解を深めるためにまとめます。

日本の経済を理解するための登場人物

  • 政府…国民や企業から集めたお金によって、公共性の高いサービスを提供するための方針を決定する組織。
  • 中央銀行…国に1つだけある、政府の依頼に基づき貨幣の発行が許されている銀行。日本の中央銀行は日銀
  • 金融機関…銀行など、お金を運用して生まれる利益によって事業を行う団体。
  • 一般企業…金融機関からお金を借りる民間の会社。
  • 国民…国に税金を納め、その対価として公共のサービスを利用する人。

金利について

金利とは何か?

金利は、お金を貸すことにより、借りる側が追加で払うべきお金(利息)、またはその割合(利子)のことです。
貸す側からすると、金利は 利回りとも表現できます。

よほどのお人好しでない限り、お金を利息なしに貸すことはしません。 お金を貸す側(銀行など)は、メリットがあるから国や企業や国民にお金を貸します。

貸したお金が返ってくる見込みが低い(信用度の低い)企業や人に対しては、お金を貸さないか、 お金を貸す代わりに高い利子を払ってもらうことになります (リスクプレミアム)

政府は銀行に借金をしている

ところで、日本という国は、国民から徴収した税金で運営されています。
しかし、税金だけで国の予算を賄うことはできません。

そこで、日本の政府は銀行に対して借金をします。 このとき発行されるのが国債です。

銀行は、お金を貸すのと引き換えに国債を入手します。
国債は、1年や10年などといった期限 (償還期限) が設定されていて、それを過ぎると券面に記載されている金額が返ってくる、という契約書 (債券) です。 また、国債を持っている側は、定期的に利息を得ることができます。

国債は、入札制度によって一番価格を高く提示した者が買うことができます。 額面100万円の国債は、100万円とは限らないのです。しかし、償還期限を過ぎると、額面どおりのお金が返ってきます。

なるべく安く買うことができれば、当然その国債で得られる利益は多くなります。 この利益と利息の合計が、国債の金利となります。

銀行のお金、国に貸すか?民間に貸すか?

銀行は、お金を貸すことが仕事ですから、お金を貸すことによってできるだけ利益を得たいと考えます。 そこで、誰に貸すかが重要になってきます。なるべく、金利(利息)が大きい借り手を探します。

そこで、低金利と高金利の考え方が出てきます。

低金利と高金利

金利は、常に一定なわけではなく、需要と供給によって変動します。
高金利となる要因と、低金利となる要因があり、そのバランスによって金利が決まってきます。

低金利要因

  • 国の信用が高く、高額でも買いたいという人が多い
  • 国債の発行数が少なく、なかなか手に入らない
  • 不景気で、一般企業に貸し倒れリスクがあるので、仕方なく国に貸す

上記のような状況では、国債の入札価格が上がるので、金利が低くなります。

低金利になると起こること
  • お金を持っている人は、安い金利で金融機関に預けるよりも、投資をしようという意欲が喚起される
  • 一般企業や国民は、お金を借りやすくなり、ローンや借金をしやすくなる
  • 投資や消費が増え、一般的に景気が促進に向かう

高金利要因

  • 国の信用が低く、高額では買いたくないという人が多い
  • 国債の発行数が多く、安い入札価格でも手に入る
  • 好景気で、一般企業により高金利で貸せるので、国債は買わない

上記のような状況では、国債の入札価格が下がるので、金利が高くなります。

高金利になると起こること
  • お金を持っている人は、利益をたくさん出すことができるので、金融機関に預ける意欲が喚起される
  • 一般企業や国民は、お金を借りづらくなり、ローンや借金をしにくくなる
  • 投資や消費が減り、一般的に景気が抑制・停滞に向かう

景気について

インフレとデフレ

インフレ

モノを買いたい人が多く、追いついていない状態。需要が供給を上回っている状態。物価が上がっている状態。
結果、モノの価格は上がり、多くのお金がなければ買えなくなります。同じ金額のお金の価値が目減りします。 消費者目線では、値上がりするため短期的には不都合でもありますが、一般的には、適度なインフレ状態が望ましいとされています。

極端なインフレ(ハイパーインフレ)が起こると、消費者は生活ができなくなってしまいます。
政府や中央銀行がそのようなことが起こらないように金融市場をうまく制御する必要があります。

デフレ

モノを買いたい人がおらず、余っている状態。供給が需要を大きく上回っている状態。物価が停滞している状態。 モノの価格は上がらず、消費者にとっては短期的には好都合ですが、 売る側の企業の売上も上がらず、従業員への還元や設備投資の機会が失われてしまいます。

デフレ状態が長引くと、企業が立ち行かなくなり倒産が増えます。また従業員の給料も伸びません。
そこで政府が公共事業を作ることで需要を喚起させたり、また金利を下げるなどして投資を促したりします。

リフレ = 人為的なインフレ

デフレ状態を脱し、金融操作によってインフレを引き起こすことをリフレと呼びます。

金融政策について

日銀の登場

インフレやデフレによる悪影響に対処するために、日銀が介入することがあります。

政府の発行した国債を、日銀が金融機関から(メリットの大きい条件を提示することで)買い取る(買いオペ)、
または買い取らせる(売りオペ)ことによって、金利を操作するのです。 と呼びます

売りオペ(金利を上げる)

日銀が保有する国債を大量に売り出せば、国債は値下がりし、金利は上がります。 金利が高ければ、お金を借りようとする人は減る。インフレに歯止めをかけることができます。

また、日銀が売りオペによって国債を売りつけることで、お金が日銀に渡り、市場を出回るお金は減り、金利が上がります。 これを金融引き締めと呼びます。

買いオペ(金利を下げる)

日銀が市中に出回る国債を買い占めれば、国債は値上がりし、金利は下がります。 金利が低ければ、お金を借りる人が増えるので消費が周り出し、デフレ脱却をはかることができます。

また、日銀が買いオペによって国債を買い占めることで、お金が市場に出回り、金利が下がります。 これを金融緩和と呼びます。

日銀総裁バズーカ

日銀は、上記以外にもさまざまな施策をすることにより金利を制御しようとします。
市場への影響力が非常に大きいため、その権限をもつ日銀総裁の発言や行動は◯◯砲やバズーカなどと呼ばれます。

為替について

異なる通貨同士の交換レートを為替と言います。
日本円や米ドルなど主要国の通貨では変動相場制を採用しているので、通貨の需要と供給によりそのレートは変動します。

円安

他の通貨に対して、相対的に円の価値が低い状態のことを言います。

仮に1ドル100円だったのが、1ドル120円になると、
1円の価値が相対的に下がっているので「円安」(ドル高)です。

円安になると起こること

  • 日本の製品を輸出する際に、他の国より安く売れるため競争力を持つ
  • 海外製品の価格が上がる、輸入コストが上がる、海外旅行に行きづらくなる
  • 海外からの観光客が増えるかも(インバウンド)

円高

他の通貨に対して、相対的に円の価値が高い状態のことを言います。

仮に1ドル100円だったのが、1ドル80円になると、
1円の価値が相対的に上がっているので「円高」(ドル安)です。

円高になると起こること

  • 日本の製品を輸出する際に、他の国より高くなるため競争力が下がる
  • 海外製品の価格が下がる、輸入コストが下がる、海外旅行に行きやすくなる

輸出大国(であった)日本にとっては、円安の方がメリットが大きいと思われていましたが、 近年は、生産拠点が海外に移った影響などにより、輸入大国でもあるので、デメリットも大きくなっています。 原材料費の高騰による値上げには、円安の影響もあります。

参考

経済ってこうなってるんだ教室 ―小学校の算数と国語の力があればわかる、経済・金融の超入門書!