2023-04-14 投稿

2023第1四半期に読んだ本の紹介

父が娘に語る経済の話。(おすすめ:★★★)

父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。

経済学について父から娘に語るような文体で、
経済の起源から現在に至るまでの経緯が理解できるようになっている。

経済学に興味はあるが門外漢だった自分にとって分かりやすくも深く経済の正解に入り込める内容だった。

ポイント要約

  • 厳しい環境がヒトの知恵を育て、権力・宗教・技術・感染症への免疫などを産んだ
  • 農耕文化が余剰を生み、余剰が格差を産んだ。物々交換から貨幣のようなもの、それを記録に残すための文字が発明された
  • 土地や労働がグッズから「商品」となり、小作人や奴隷が商業社会に巻き込まれ、産業革命でそれがさらに加速した
  • 経験価値(献血、ボランティア)交換価値(利息、商品等) の違いを理解しよう。前者はお金のやり取りが動機にならない
  • 銀行は現在にないお金を生み出し、借り手に貸す。それは将来見込まれる価値の前取りであり、破綻する可能性もある
  • 金融経済では借金のために商品を捨てたり本末転倒なことが起こる。金利は経済を加速させるが、本来金利自体は価値を持たない
  • 機械化が進むと、効率は上がるが失業者が増え、消費が落ち結局経済が死ぬ。人間は「消費を行う」点で機械より優れている
  • テクノロジーを十分に活用しつつも、人間らしさを失わず、権益者の奴隷になることもない社会をめざすべき
  • 通貨は将来にわたって価値があるという信用から成り立っているので、先行きが不安であれば暴落し、逆であれば高騰する
  • 市場社会は利益追求のために破壊を歓迎する。政府による介入は・民主主義には腐敗もあるが、それでもなお有効な手段である

12週間の使い方(おすすめ:★★★)

12週間の使い方──実行サイクルの4倍速化プログラム

平たく言えば目標管理術なのだが、 1年(=12ヶ月)だと間伸びして年の終わりには忘れ去られてしまう目標では無く、 締切を12週間後と定めることで、予測しやすく、行動を促すことができるということが優れている。

この本の言うように12 Week Yearを定着させれば、 漫然と四半期や一年を過ごすのでは無く、価値のある12週間を過ごすことができそうだ。

ポイント要約

  • 12週間計画が年間計画より優れているのは、より予測しやすく、集中的で、体系化されていることだ
  • 魅力的なビジョンがあるから、失意のどん底も乗り越えることができる
  • 12週間の目標を2-3個に絞り込み、それぞれの目標を達成するための戦術を書き出し、毎週実行する。気分ではなくコミットメントに基づき行動する
  • 何かを達成するには、意志の力に頼るばかりではなく、体系化された仕組みの上で行うことが必要
  • 多くの人が、簡単に計画を放棄する。自分の未来を築く時間を他人の未来を築く時間に充ててしまう。「滑落していい。だが失敗するな」

1440分の使い方(おすすめ:★★★)

1440分の使い方 ──成功者たちの時間管理15の秘訣

1日は1440分。時間について意識を変えることができる。1分あればいろいろなことができる。 また、やるべきこと・やった方がいいことは無限にあるから、何を優先すべきか(何を捨てるか)を考える参考になった

ポイント要約

  • 時間は全ての人に与えられた最も重要な貴重品。多くの人は時間を失うことに無頓着。1分あれば色々なことができる。
  • MIT(Most Important Task)を常に特定し、最優先で行おう。タイムブロッキングした予定は、診察の予約だと思って対処する
  • 先延ばしにすることで自分との約束を破ってしまう
  • やるべきこと・やったことがいいことは、やれる量よりも常に多く存在することを知っておく。
  • 当面の目標達成に役立たない誘いは、すべて断る。
  • 曜日ごとに、テーマを決める。1度しかさわらないルールを適用し、その場で処理できないことはスケジュールに入れる。
  • 朝に不可侵の60分を作ろう。20分程度の早歩きはおすすめ。大事なのはE-3C(エネルギー・記録・スケジュール・集中)

地政学が最強の教養である(おすすめ:★★)

地政学が最強の教養である “圧倒的教養”が身につく、たった1つの学問

地理的な立場が国家にどのような影響を与えるかを解説していて興味深い。
やや推測まじりな部分もあると感じたが、温暖化によってロシア以北の不凍港が誕生するといった話は面白いと感じた。

ポイント要約

  • 地政学は未来予測に使える
  • 地政学を学ぶメリット「世界情勢の解像度が上がる」「長期未来予測のツールになる」「教養がみにつく」「視座が変わる」
  • ロシアは土地は広大だが永久凍土の割合が広く、農業生産性が低く不凍港を求めるために他国を攻めてきた
  • 地理が決まれば、気候・周辺国・民族性・産業・歴史・統治体系が決まる
  • 島国は天然の要塞。モンゴルも日本攻略に失敗した。アメリカも気候に恵まれ、カナダとメキシコを除けば海に囲まれた島国といえる
  • アメリカはシェールガスからエネルギーを生み出す技術ができたことで、中東の石油への依存が少なくなった
  • ランドパワーの中国とロシアは、太平洋側進出を日本列島という要塞に阻まれている。だから尖閣諸島や北方領土の確保に執着している
  • 水を使った政治学をハイドロポリティクスと呼び、チベットの河川上流を持つ中国は下流のカンボジア等の国に対して強い権限を持つ
  • 核爆弾による「相互確証破壊」を実現するために、追跡が不可能な深い海が必要。そのため中国は南シナ海を狙っている
  • 温暖化により生まれた北極海航路の検討がされている。ロシアは北方領土を注視・中国は北海道の土地買収。日本の釧路も脚光を浴びる可能性がある
  • 中東のオスマン帝国を経由しないために、英西葡などによる大航海時代がはじまった。イスラム教の戒律は砂漠地帯で生き残るための知恵が組み込まれている
  • インドは中立国だがパキスタン分離闘争の際ロシアに支援を受けたため、今でも関係がある。アメリカのちょうど反対側にあり時差と英語力で人気が高い
  • 東南アジアで次の先進国候補はベトナム・インドネシア、若い。ヨーロッパのEU発足の元になったのは石炭鉄鋼に関する国家間協定(欧州石炭鉄鋼共同体)

社会の変え方(おすすめ:★★)

社会の変え方 日本の政治をあきらめていたすべての人へ

明石市の子供施策で大きな実績を出し、国家政策の参考人としても招致された泉房穂市長の書籍。
家族に降りかかった困難に対する怒りを社会の問題解決に昇華していく姿勢は、読んでいてとても感銘を受けた。

子育て施策はこれからの時代を担う若者世代にとってもかなり重要な施策であることは間違いがないので、 明石市のような自治体が今後どんどん増えていくことを願う。

ポイント要約

  • 「うちの家だけよくなったら、それで終わりか?」原点は、冷たい社会への復讐
  • 大学の誘致やデートスポットなら大阪・神戸に敵わない。2人目が欲しい30前後世代へのこども支援に特化する。冷静に戦略を立てた
  • 無料化は、予算の配分を変えるだけなので、難しくない
  • こどもの親世代が集まり、人口が増え、駅前が賑わい、建設などの周辺事業も賑わい、ブランドがついてきた。「人」が重要な施策もある。時間はかかる
  • 市長に就任するずっと前から、「子育ての社会化」を練ってきた。責任があり、思いつきではいけない。タイミングを見計らい「置きに行く」感覚で施策を実施した
  • 既得権者の反発を受け、自分の家族が怖い目に遭うこともあった。それでも腹を括ってやった
  • 周りが敵ばかりに思えても、「市民のため」という思いが自分を動かす
  • 部署の垣根を越える「チームアプローチ」既存の領域外にも飛び出す「アウトリーチ」たらい回しにしない「ワンストップ」
  • 「一人ひとりの幸せは異なるから、それぞれの幸せをしっかり応援できる社会こそが望ましい。周囲に遠慮し、我慢して合わせるのは、かえって不幸を招く。」
  • 障害がある人がいることすら知らずに育った「優秀」な人たちが政治家や官僚になり、悪意なく「優生保護法」のような法律を作り、政策を推進してきたことがわかった
  • 霞ヶ関の机の上で作った政策で、困っている人を起点にした政策になっていない。実態を知らず、見えていない。当事者に寄り添っていない
  • 国民から預かっているお金に知恵と汗の付加価値をつけて返すのが政治の役割。税金を預けたくなるような政治を目指すべき
  • 声を上げよう。SNS、パブリックコメント、議員に直接言う。選挙をなりゆき任せにせず、投票する。市長は権限が強いので、誰がやるかで大きく変わる
  • 明石、流山、福岡市に共通するのはまちの現実を客観的に判断していること。立ち位置・時代状況を踏まえ効果的な手段を選択していることが評価された
  • 人の痛みを想像することが「やさしさ」。でも想像力には限界がある。本当のところは本人しかわからない。

競争しない競争戦略(おすすめ:★★★)

競争しない競争戦略 改訂版 環境激変下で生き残る3つの選択

たくさんの興味深い実例を出しながら、リーダーでない企業がどのように市場で生き残っていくかを解説している。 これからビジネスを始めたりゼロから事業を作っていこうとしている人にとってはこれらの例は参考になるはずだ。

ポイント要約

  • 横並び思考の価格競争によるレッドオーシャンから脱出しよう。「競争しない競争戦略」には、ニッチ戦略、不協和戦略、協調戦略がある
  • 競争のメリットは、市場活性化、多様なニーズ対応、企業の能力向上、価格の低下。デメリットは、顧客がないがしろにされる可能性や、過当競争による企業の疲弊。
  • 孫子の教え「戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり」戦いにおいて全面競争はせず、うまくかわすや傘下におさめたりして「戦わないこと」が重要だ
  • 生物学でいうニッチとは、一つの生物種のみが生き残ることのできる究極の単位。転じて似通った特徴やニーズを持ったユーザー群で構成される小規模な市場
  • リーダー企業の戦略定石「周辺需要拡大(朝マック)」「同質化政策(コカコーラ以外)」「非価格対応(安売りしない)」「最適シェア維持(良い顧客だけとる)」
  • 事業のアンバンドリング(分割)、リ・バンドリング(最適な組合せ)が切込口になりうる。ICTが歩数計や時刻表のディスラプター(市場破壊者)となった
  • 「競争しない競争戦略」をとる企業間の中では競争が発生するので、追従者の同質化を遅らせ、先発優位の期間を長く保持することが重要

ニッチ戦略

  • ニッチ戦略は差別化戦略と異なり、リーダー企業とは戦わない。リーダーを参入させないために、市場規模・単価・利益率・市場成長率を大きくしすぎないことが必要
  • ニッチ戦略を分類すると、分野を絞って優位に立とうとする質的限定と、供給量や市場を絞る量的限定に分けられる。
  • 技術ニッチは、リーダー企業が追従できないハイレベルな技術を開発し続けるか、五感の絡む領域で「次元の見えない差別化」をめざす必要がある
  • チャネルニッチでの優位性を築くには未開拓の組織団体を早期に狙う必要がある。特殊ニーズニッチはその業界の現場ニーズ理解が大手の参入障壁になる
  • 限定量ニッチでは、タマスはトップ選手向けに限定することで後発ながら世界ブランドに成長した。スノーピークは社員自らキャンプをし、顧客の直接意見を聞く。
  • 残存ニッチでは業態が衰退する中でのビジネスモデルの確立が重要
  • 定義が変われば売り方も戦略も変わる。腕時計を「時間を確認する装置」と見るか、「パーソナリティを表現するためのリストウェア」と見るか
  • ニッチ市場の企業が拡大するには、互いに競合しない複数のニッチ事業をもつマルチ・ニッチ戦略や、チャレンジャー企業への転換を図るが、逆効果になることもある

不協和戦略

  • 不協和戦略としてリーダー企業に対して仕掛ける「企業資産の負債化」「市場資産の負債化」「論理の自縛化」「事業の共喰化」がある
  • 企業資産の負債化は、レーベル事業をもつソニーのウォークマンに対するiPod、多数の講師を抱える大手予備校に対するスタディサプリなど、リーダー企業の資産が逆に負債となることを突いた戦略である
  • 市場資産の負債化は、生花業者にとっての冠婚葬祭業や、出版社にとっての愛読者など、リーダー企業が築いてきた顧客を蔑ろにできないために参入できないことを突いた戦略である
  • 論理の自縛化は、掲載に価値づけするリクルートに対するリブセンス、若見せするブランドに対し年齢相応の価値を打ち出すなど、リーダーが追従すると自身の否定になることを突いた戦略である
  • 事業の共喰化は、リーダーが強みとしてきた商品とカニバる商品を出し、追従しづらくなることを狙った戦略である

協調戦略

  • 協調戦略ではバリューチェーンに注目し、自社資源の有無によって「コンピタンス・プロバイダー」「レイヤー・マスター」「マーケット・メーカー」「バンドラー」に類型化できる
  • コンピタンス・プロバイダーは、GEの航空機エンジンのように、競合相手にもコア・コンピタンス領域では受託するなど、協調しながらも独占をめざす戦略である
  • レイヤー・マスターは、セブン銀行のように、ある機能だけを提供して競合のバリューチェーンに入り込み、その中で寡占をつくり利益を上げる戦略である
  • マーケット・メーカーは、ラクスルの印刷業や弁護士ドットコムの広告業のように、相手のバリューチェーンに新たな機能を追加することで市場を形成する戦略である
  • バンドラーは、オフィスグリコやアスクルのように、他社製品も組み込んで提供することで他社が追従してきても切替コストによる参入障壁を形成する戦略である