2023-07-01 投稿

2023第2四半期に読んだ本の紹介

Measure What Matters(おすすめ:★★★)

Measure What Matters 伝説のベンチャー投資家がGoogleに教えた成功手法 OKR

インテル出身の著者が、創業したてのGoogleのマネジメント手法としてOKRを導入し、 それがGoogleの急成長に大きく貢献し、また同社の各となる価値観になっている。

OKRは、1つのObject(目標)とKey Result(重要な指標)の関係性をもとに、目標を樹形的に分解して達成していくというものである。

ビジネスの達成度を測る指標としてKGI・KPI・CSFといったものもあるが、 OKRはよりシンプルに目標を達成するための表現ができていると感じた。
上位のKey Resultが下位のObjectとなるように、再帰的に設定できるところがプログラマ的には魅力でもあると思う。

ポイント要約

  • OKR=Objective(目標)+Key Results(主要な結果)には、4つの威力「Focus(集中)」「Alignment(目線の一致)」「Tracking(追跡)」「Stretch(高みへの挑戦)」がある
  • アンディ・グローブ「ダメ会社は危機で潰れる。良い会社は危機を乗り切る。最高の会社は危機を糧にする」
  • フォードの事例(重量や価格等の数値を追求しすぎた結果事故が多発しリコールに)から学べるのは、重要な指標を見逃すとリスクが大きくなる。対策の一つとして「数値目標」と「品質目標」を対にする
  • シリコンバレー起業家の3つの合言葉「問題を解決せよ」「シンプルなプロダクトをつくれ」「ユーザーと対話せよ」
  • OKRを実施するリーダーは目標にコミットすることを公言し、断固としてそれを貫く姿勢を示さなければならない
  • どのように業務を遂行するかは、従業員の責任と判断に委ねるべき。管理側が介入すると、自らの役割を限定的に捉え主体性を無くしアウトプットが低下する
  • マイフィットネス・パルはOKRを全社に導入し、誰もが最優先目標を把握している。それは誰もが他のことにノーと言う自由を持つことである
  • 現場で働く社員は、自分の仕事が会社全体の目標とどうつながっているかがわかると意欲的になるという研究が数多く報告されている
  • OKRは私たちをコンフォートゾーンの外へ押し出す。目標の難易度と達成量の相関を調べた研究では難易度が高いほどパフォーマンスは高まる
  • OKRは企業文化をこれから作る若い会社に特に有益、会社の規模が小さい時ほど少ないリソースをどこに向けるのか明確にすることが重要だ
  • 「文化は戦略を簡単に打ち負かす」。経営思想家ダウ「他者にまねされたり、コモディティ化しないのは文化だけだ」
  • OKRは単に組織で働くのではなく、組織のために働くことを促す。定着させるためには対話を重ね、互いを信頼できることが必要
  • 情熱とOKRは相性が良い。情熱がどんな行動につながるのか、対外的にも示すことができる。

死は存在しない(おすすめ:★★)

死は存在しない ― 最先端量子科学が示す新たな仮説

工学の博士号をもつ科学者である筆者が、現代では「非科学的」と見做されるような現象(偶然の一致や、未来予知など)を、科学的な観点から説明しようとした意欲作。 「ゼロポイントフィールド仮説」によって、前世・来世、死後の世界、時間に関する認識などを説明しながら、「死」にまつわる人々の解決できない悩みに著者なりの答えを提示している。

本書で語られる著者の実体験は、唯物論的世界観で片付けるには出来すぎており、興味深い。 仮説の域を超えないものの、現代科学の範疇を超えたものに対して説明を試みており、その内容については一考する価値があると思う。

農家はもっと減っていい(おすすめ:★★)

農家はもっと減っていい 農業の「常識」はウソだらけ

会社員を辞めてゼロから就農した著者が、長年の農業での経験を交えながら現在の日本の農業の実態と、その問題点を論じている。

現場の目線から世間の農業に関する一般論に対して鋭くつっこみつつも、自身が運営する農園や野菜への愛が感じられる。
現在の日本の農業への理解が深まることは間違いないと思う。

ポイント要約

  • 農業は、善なる弱者論に押し込めるようなつまらない仕事ではなく、もっと知的で多くの人が考えるに値するテーマである
  • 農家の8割が売上500万以下の零細であり、兼業などで赤字にもかかわらず惰性で続けている。それが日本の農業の発展や効率化を妨げている
  • 集約が進み、資本ある企業がマーケット・イン型の農作物の安定供給を行う一方、個人はそれと競合しないファンベースの作物を生産することで両者の棲み分けが可能になる
  • 農協に出荷するだけの意志のない場当たり農業は早晩立ち行かなくなる。大規模生産者とたたかう力がないなら、弱者なりの生存戦略を考え続けよ
  • 有機農業の制約が面白さを生む。「売れ線」に寄せたマーケティングではなく、自分の好き嫌いで勝負する方が面白いし、戦略的にも正しいと筆者は考えている
  • 1970年代に手押し型田植え機、乗用型田植え機は1980年台に徐々に普及した
  • 農業経験値は大規模農業者ほど得やすい。自主的に動ける人は、動機の種類が多く喜びの層が厚い。動機の種類が乏しければ満たされなくなると急にやる気を失う
  • 農業で独立するために一番必要なものは「インフラ」。ハード面では生産、出荷・貯蔵、運搬・道具。ソフト面ではわからないことを聞ける同業者、資材業者、機械の整備士、バックオフィスのノウハウなど
  • 独立農業に必要なのは「座組み力」。プロジェクトを要素分解し、その遂行に必要な人や組織とつながる力。自分の強みはどのような座組みの中で発揮できるのかを客観視して他者と組むことが必要
  • 「座組み力」は生得的なものではないが、事業を始める時点では持っていなければならない人間力のようなもの。スキル化して共有するのが難しい資質
  • 有機農業を特別視する必要はなく、好みで選べば良い。有機vs慣行のような対立構図は無意味。手段のひとつであり、生育環境を整えるという観点では統合環境制御技術も有機農業も目指すところは同じ
  • 巷で解とされる分業による効率化には仕事に優劣を生み出す弊害がある。組織が未完成で分業がまだらな方が、メンバーの率直な意見を生み、業務横断的な視点で考えたり、物事を大きく判断する抽象思考が養われる
  • 勤め人は仕事と家族と地域が別の場所にあるが、自営業者は重なっている。課題を失うと逃げ場を失うケースがある。一人で抱え込まないよう、カウンセラーに相談したり、適度に遠い友人をつくるのは有効

砂漠(伊坂幸太郎)(おすすめ:★★)

砂漠

東北の国立大学に進学した大学生5人を中心にして、季節ごとの学生生活のシーンを描いた作品。 それぞれの心の機敏や変化などが繊細に描かれていて、よくありそうな学生生活の中にも、数々のイベントやドラマがあるのだということを知れる作品。

心に染みる名言

  • 「自分たちさえ良ければいいや、そこそこ普通の人生を、なんてね、そんな生き方が良いわけないでしょうに。ニーチェも言ってたじゃないですか。『死に物狂いの剣士と、満足した豚からも等距離に離れていたところで、そんなのはただの凡庸じゃねえか』ってね」
  • 「賢いフリをして、なにが楽しいんですか。この国の大半の人たちはね、馬鹿を見ることを恐れて、何もしないじゃないですか。馬鹿を見ることを死ぬほど恐れている、馬鹿ばっかりですよ」
  • 「休む間もなく、次のことを考えなくちゃいけないなんてね。(略)こんなんだからね、学生は世界のことを考えないんですよ。将来のこと、将来のこと、いつまで経っても将来を考えて、余裕なんてないわけですよ」
  • 「人間とは、自分とは関係のない不幸な出来事に、くよくよすることですよ」「矛盾しちゃいけないって法律があるんですか?」
  • 「これをすれば幸福になれる、っていう道標があれば(略)楽だよ。でも、結局さ、(略)『自由演技って言われたけど、どうすればいいんだろう』って頭を掻き毟って、悩みながら生きていくしかないんだと、わたしは思う」

経済ってこうなってるんだ教室(おすすめ:★★)

経済ってこうなってるんだ教室 ―小学校の算数と国語の力があればわかる、経済・金融の超入門書!

金利、為替、景気、金融政策など。経済学の門外漢でもわかるようにとても丁寧に説明してくれている。(それでも分からないところがあるのは、私の理解力が貧しすぎるだけなのか・・・) いわゆる「アベノミクス」当時に書かれた本なので、やや時代を感じる部分もあるが、経済のキホンのキホンを知るには良い書籍だと思う。

引用

企業としては、粗利がどんなに増えても、人件費や光熱費といった経費がかかって手元にわずかな利益しか残らなければ、その事業を続ける意義を感じられません。しかし、経費として消えたお金は、必ずそれを受け取る側の収入となっているので、無駄ではないのです。それはすなわち、その商行為がなければ発生していなかった、社会への新たな富の付加でもあり、GDPの増加にも寄与しているのです。このように考えると、低利益だけど高付加価値(=経費が多い)企業は、立派な社会貢献をしているともいえます。

集約が進まない途上国の農業生産性は、工業生産性よりも低いので、安価な労働力が農村から工業地区へと供給され、工業は飛躍的な発展を見せます。ただ、こうして農業従事者が減っていくと、農村の余剰労働力が底をつき、工業が成長に必要な新規労働需要を満たせない状態が起こります。それをルイスの転換点と呼びます。

超メタ思考(おすすめ:★★)

「超」メタ思考 頭がよくなる最強トレーニング57連発

元コンサルタントの仕事術。仕事するうえで役立つ(動く前の)考え方を鍛えるための本。 当たり前ともとれる内容はあるが、今一度自分が非効率な時間の使い方や仕事の進め方をしていないか振り返るのに良い本。

ポイント要約

  • 課題解決のプロセス「認識(何が問題で、最終的にどうしたいのか)」「推論(何から始めるのか、仮説を立てて整理する)」「執行(決めたタスクを決めた手順で行う)」
  • 「フェルミ推定」…実際に調査するのが難しい数値を手掛かりから推論して短時間で概算する手法。
  • 上司に媚びるというよりは、思考を先読みすることで他者評価が上がり、仕事が楽になる。
  • 長く働くと現状維持バイアスがはたらき、変化や問題意識を避けがちになる。どんな仕事の際も「この場合のあるべき姿って、どんなものだろう」とメタ視点で考えることを習慣にする
  • 理解できていない内容を確認せずに「わかったつもり」でタスクを進めてしまうと齟齬の原因になる!「いちいち確認しなくても大丈夫」と言われるくらいがむしろ理想的。念の為〜、認識合わせのため〜確認しよう
  • 指示が的確な上司はいない前提で動こう。認識レベルの違いによる齟齬は必ず生まれるので、細かく確認し合う作業が必要!上司のタイプによっても程度は変えて
  • 要所要所で報告や確認をしておくことで、タスクの無駄を防ぐことになるだけでなく、自分自身を守ることにつながる
  • 結果的に同じことをやるにしても、「自分が提案してやり始めたのか」「誰かに言われてやり始めたのでか」では雲泥の差がある。作業者マインドを取り払い、先回り力を身につけよう
  • 「課題の推論」では、課題のどこに問題があるかを分解し、現実的なリソースを考えてあらかじめ優先順位を決める
  • 商材、販売チャネル、工程などで「和を分解」し、どこに問題があるのかをつきとめる。このとき、MECE(Mutually,Exclusive,Collectively,Exaustive、全体量が変化しない)であることに注意
  • 和と積をつかって分解し、ロジックツリーに表現することで課題を深掘りし、どんな打ち手を打てばいいかが具体的にわかる
  • 情報量が勝負を決めるので現時点で集められるデータはできるかぎり全て集めよう。自分がもつ材料ではこれ以上精緻化できないレベルまで整理しよう。プレゼンする際に有利になる
  • 「アブダクション」…現実の現象を説明できるような仮説を構想し論理的に展開していく手法
  • 未知の課題に対応する時は、小さく始める、いきなり完璧を目指さない、最初の仮説にとらわれすぎない、締め切りを決めておく
  • すぐに終わりそうな仕事はさっと終わらせて相手に返し、大きな仕事は小さく分解しこまめに返す。ボールを持っている時間を極限まで減らそう
  • 軌道修正がひつようだと思ったら、認識(そもそもの前提)や推論(ロジックの設定)に戻る。執着や愛着は手放す必要もある
  • あるべき姿を想起できなければ、課題は認識できない。自分自身の人生でも自らの課題を見つけ、人生を設計していくという意識が必要
  • しんどい時期こそ自分の「キャリア貯金」を積み重ねている時期。仕事に慣れてこなしている状態のときは、貯金を切り崩している。楽な状態に甘んじず、意図的にハードルを上げて挑戦しよう